90年ほど前に建てられたモダンな邸宅があり、管理の都合上やむなく解体することになったとお客様からお話がありました。お話のテーマは、当時窓に使われたお洒落なガラスを処分するには忍びなく、ぜひお引き取り願いたいこと、そしてステンドグラスパネル の一部分に使い、思い出として残したいとのことでした。
厚さ5ミリでさらにそれを保護する3ミリガラスが被せてあり、その頑丈さもさることながら、建物に見事にマッチした様は90年前にタイムスリップしたかのようでした。
すでに具体的なイメージをお持ちでしたので、良い作品になる予感とともにラフスケッチを作りながらイメージを積み上げ、お互いに確認の上制作に入りました。気づけばステンドグラスとは同じガラス同士、多少の厚みと質感の違いはあっても何ら違和感なく溶け合い、予感は的中し新旧のガラスが見事に融合した作品になりました。
お客様の思い出としても気に入っていただいたことが何よりも嬉しいことでした。和のステンドグラスを目指す私にとっても興味深い制作になりました。そして今では殆ど出合うことのない、この素晴らしい昭和レトロガラスを無駄なく生かせる作品作りをしていきたいと思っています。